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事例紹介

空間的制約と時間的制限―2つの壁をクリアした低空頭リバース式杭打機。

2007年5月21日

事例キーワード

お客さま:
杉崎基礎株式会社殿
業種:
基礎工事業
製品:
ZX70リバース式杭打機

従来のRCD工法の概念を変えたSRD25。電車の架線に触れない高さと、資材や作業員がひしめく狭小スペースでの稼動を実現したコンパクトなボディながら、大口径、大深度の掘削を可能とした。

一日およそ350万人が利用する日本最大のターミナル駅、東京・新宿駅。その新宿駅で今、10余年の工期を要する大プロジェクト「新宿駅南口地区基盤整備事業」が進行している。2000年2月に着工したこの事業は、JR新宿駅南口に隣接し、JRの線路を超える国道20号線(甲州街道)を幅30mから50mに拡幅、その対岸側となるJR東日本の線路上空に約1.47ヘクタールの人工地盤を創り上げ、そこにバスターミナルやタクシー駐車場、一般駐車場、公園などを重層的に整備するほか、最終的に新たなターミナルビルが完成する予定だ。

このプロジェクトのカギを握るのは何といっても、線路上を覆う形で築かれる1.47ヘクタールの人工地盤である。何しろ工事を行うエリアは、首都圏大動脈の1つである国道20号線と、昼夜電車が行き交うJR山手線をはじめとする複数の鉄道幹線とが上下で交差している場所である。さらに地下には都営地下鉄や、電気・ガスなどのライフラインを束ねた共同溝が走っている。人工地盤の造成にはこれらの一切に影響を与えず、かつ将来的に想定される大地震にも揺るがない基礎を打設することが求められる。

 

電車の架線に線路、陸橋などが錯綜する新宿駅南口。工事は終電後、送電がストップし、安全を確認した上で行われる。

とりわけ神経を使うのが線路だ。新宿駅南口付近にはJRの山手線をはじめ中央線、総武線、埼京線、中央本線など複数の線路がひしめいている。そのひしめく線路の間隙に仮設ステージを組み、建設資材を入れ、建設機械を動かしながら、まさに縫うように基礎杭を打設していく。当然、作業は電車の走らない終電から始発の時間帯に限られ、しかも、レールや電車架線に傷を与えることはもちろん、毎作業終了後、電車の走行空間を遮る可能性のあるものは一切、留置してはならない。

 

代表取締役社長の杉崎吉仁氏。「これからは専門技術を極めた企業同士が共同で事業を仕上げていく時代。その意味でチャンスは広がっていると思う」

こうした極めて厳しい制約のある基礎工事を担当しているのが杉崎基礎株式会社殿である。

だが、これだけの制約条件にもかかわらず代表取締役社長の杉崎吉仁氏は冷静に語る。
「とくに他の現場と大きく違うことはありません。最適な方法は何か、それをきちんと見極めていくだけです」

同社はこうしたさまざまな制約要件をもつプロジェクトに計画段階から参加し、あらゆる工法と工期、コストのなかから最も適した工法を提案し、実行させるノウハウと実績を持つ。数十に及ぶ多様な基礎工法と高い技術力で、国内はもちろん、海外の大型プロジェクトも手がけている。

 

水を注入する前の掘削孔。口元管(ライナープレート)の中を、ドリルパイプが慎重に下りていく。

今回は場所の制約上、既成の杭を使う方法は取れないため、自ずとその場で杭をつくる「場所打ち杭」工法が選択される。そのなかで施主であるJR東日本が求めてきたのは「リバース・サーキュレーション・ドリル工法(RCD工法)」である。

RCD工法とは、日立建機が1965年にドイツから初めて日本に持ち込んだ工法の一つ。ドリルの先につけた特殊なビットを回転させながら支持層まで掘削、掘削した土砂は孔内に送り込まれた水と一緒に泥水化させ、ポンプで吸い上げる。その後孔内に鉄筋を挿入し、コンクリートを打設して杭を完成させる工法だ。掘削土を泥水化させて排出するため、孔内に残土が残りにくく、精度の高い基礎杭がつくれることから、新幹線の高架橋など高い信頼性が求められる交通インフラ建設に使われてきた。今回のJR東日本の要求もこの判断に沿ったものだ。だが豊富なノウハウを有する同社でも、この現場にはクリアすべき壁があった。

 

「今回の現場は、今までのRCD工法での機械をそのまま持ち込める状況ではありませんでした。なぜなら従来機の仕様では、線路脇など幅が狭く、高さに制限のある場所での使用は難しかったからです。そこで日立建機に依頼して、この現場に対応できるコンパクトで機動性がある機械の開発を新たに求めました」(杉崎氏)

日立建機ではこれを受け、現場を熟知する杉崎氏と討議を重ねていった。その結果、完成させた自信作がZX70をベースにしたリバース式杭打機「SRD25」である。
「RCD工法杭打機の技術時計を10年は進めた。それほどインパクトのある機械と断言できます」
杉崎氏はこう自負する。

 

システム概要図

電車の架線に触れることのないよう、機械の最高部を4.5mの低空頭設計とし、ボディは可能な限りコンパクト化した。その一方、掘削能力のカギを握るポンプのパワーを高め、サイズを落としながらもパワフルな吸い上げを実現。また新たな機能としてビットの先端部から高比重の安定液を送り出し、ビットを回転させながら泥土を押し上げて排出できるようにした(正循環方式)。これにより、1台の機械で泥水の吸い上げ(逆循環)と押し出し(正循環)という2つの循環方式を、現場の状況に応じ簡単に切替えることを可能にした。これに加えて玉石用特殊ビットを開発したことで、従来では施工不能だった玉石層などにも対応でき、粘土層や砂層だけでなくより幅広い地層の掘削を可能にしている。

 

吸い上げられた泥水は巨大な沈殿槽で水と土砂に分離させられ、水は孔内に戻され再利用する。SRDの工法は環境にやさしいクローズド型の工法でもある。

杉崎氏の案でキャブ内に組まれた傾斜計や流量計は、視認性の悪い夜間作業での作業効率と安全性を大きく高めた。

 

さらに泥水の吸い込み量が分かる流量計、リーダーの傾斜計、モーターのトルク、回転数がモニタリングできる機能を備え、作業の「見える化」を徹底した。

新宿駅の終電は深夜1時。そして始発は4時半に動き出す。さらに作業準備を考慮すれば、実質の作業時間は毎夜3時間もない。
「だからこそ、圧倒的なパフォーマンスと、作業ムラの少ない安定した稼動性にこだわりました。正直、機械は国内のみならず海外でも探しましたが、我々の要望と信頼に応えられるメーカーは日立建機さんしかなかった」

世界の基礎現場を知る杉崎氏はこう評価する。そして最後にこう結んでくれた。
「今後、人件費の高い日本人が海外で勝負をするとすれば『技術』しかない。とくに我々専門業者にとっては技術がすべてです。日立建機さんには、我々の技術の可能性を引き出す機械をこれからどんどん作っていってほしいと願っています」

 

(Photo:小島真也 Text:佐藤聡)

※この件についてのお問合せは弊社(日立建機)までご連絡願います。
※事例紹介に掲載されている記事の無断転載を禁じます。

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